50ミリブログ

20150524_勝手に憧れ1_瀧本幹也さん

たまに「影響を受けた写真家っていますか?」という質問を受けます。

人って、先人の誰かに尊敬して影響を受けて、自分なりに解釈と経験をして人生を歩むものなのかもしれません。
ただ、影響を受けた人って同じ職業の方に限る訳ではなく、いろんな分野のいろんなタイプの人の影響を受けて人物形成されていくと思うので、単純に「○○さんに影響されて」とはなかなか答えられません。それはたぶん、仕事上でもプライベートでも、人間にはいろんな感情があるからだと思います。

今月の雑誌SWITCHが是枝監督の特集で、その中に「私を作った9人のテレビ人・映画人」というページがあり、なるほどなと思いました。
ちょっとそれを真似して、うまくまとめるわけでもなく五月雨式にだけども、自分への備忘録も含めて影響を受けた方々について書いてみようかなと思いました。
あの、勝手に憧れてます!って感じで。あくまで個人的な目線です。

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勝手に憧れ。#1 写真家・瀧本幹也さん

ボクが写真を志すきっかけになった写真家の瀧本幹也さん。もちろん面識などなく勝手に憧れているだけだけど、瀧本さんの写真に出会っていなかったらボクは写真家を目指すこともなかったかもしれません。
逆に言えば出会ってしまったがゆえにこんな人生になってしまったというか。笑(もちろん楽しい人生になっているので感謝しています。)

実はボクは芸能とか芸術とかにとても疎く、なんとなく広告って好きだなぁと思っていただけだったのですが、それを一気に広告の写真が撮りたいと思わせられ、いつのまにか行動してしまいました。実際に業界へ飛び込んでみると写真の世界は大変厳しいものでしたので、今考えるとカメラのことを何も知らないのに「自分もそんな仕事がしたい」などという想いだけで飛び込んだ若かりし自分に呆れますが、道を標していただいたので勝手に尊敬しています。

広告の写真というのは雑誌と違ってクリエイターのクレジットが載らないので、素敵だなと思う広告写真を見ても誰が撮影したかってすぐには分からないんですよね。広告賞とかで見て「やっぱりこの人が撮ったんだ」と知ることが多いです。

ボクは是枝監督の映画が好きでいろいろ観ているのですが、『そして父になる』を初めて観たとき前作までの作品以上に映像(カメラワーク)に心が惹かれてしまいました。ドキドキしちゃったというか。うまく表現できないけど、好きな女の子ができた日のような感覚になりました。
気になってエンドロールでクレジットをチェックしてみると、撮影がなんと瀧本幹也さん。うーむ、またもややられてしまいました。

是枝監督作品は『空気人形』でポスターなどのスチール撮影をされていらっしゃるとは知っていたけど(森本千絵さん×瀧本幹也さんの空気人形のポスター写真の雰囲気がとても好き)、まさかムービーのカメラマンまでされているとは知りませんでした。以前からCM撮影とかはされていましたが、映画本編とは驚きです。

どうやら『そして父になる』で初めて長編のムービー撮影をされたそうです。是枝監督自身がたまたま瀧本さんが撮影したダイワハウスのCM(リリーフランキーさんと深津絵里さんが夫婦役のやつ)を見て、「これ撮ったの誰?」と調べて直接オファーがきたそう。
長編ムービー撮影の経験が無い写真家に発注する是枝監督もすごいけど、何よりも人脈での紹介ではなくてたまたま見たCM作品を見て調べてオファーしたというところがステキです。(SWITCH参照)

SWITCH Vol.33 No.6 是枝裕和の20年 ”海街”へー ある家族の物語

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(どうでもいいけど今回のSWITCHの是枝監督特集ページの写真家たちが贅沢すぎる。笑)

そして6月公開の是枝監督作品『海街diary』も瀧本さんが撮影されたようです。
公開に先駆けて瀧本さんが撮りおろした海街diaryの写真集も発売されたので思わず買ってしまいました。滅多に写真集って買わないのに。それに写真集のアートディレクションが森本千絵さん。しかもたまたま仕事で名古屋駅の本屋さんに資料本を買いに行った時にちょうど発売日だったという。何故か1冊しか置いてなかったので即買いです。またやられました。

なんというか、奇をてらわず派手でもなく、ストレートなんだけど力強くて美しい。偶然なのか必然なのかも分からないくらい自然で、すごく物語があるんです。「うまいな、キレイに撮るな」と思う写真家さんはたくさんいるけど、「心をギュッと掴まれてしまう」ような写真家さんは、結婚相手と出会う確率くらいなかなか出会えないですよね。是枝監督が評するように、その眼と指に嫉妬します。普遍的で、きっと何年後に見ても美しく感じる本物さがある写真なんですよね。

そんな瀧本さんの「本物の写真」を拝見するたびに初心に戻ることができます。ありがたいです。
そこまで年齢変わらないんだけど、これからもずっと憧れです。しかも同じ愛知県出身だそうで。勝手な想像ですが、カメラのメカニック的なことよりも、気持ちを大切に撮影されている気がします。

実は写真や映像というものはすごく個人が出るものなので、どんなにいい見本があってもその人と同じ写真なんて絶対撮れないし、逆にボクの写真であっても他の誰かが同じように撮れるものではないと思います。写真は量産できるものじゃなく、ファインダーをのぞいた個人が今までの人生の経験をもとに気持ちを込めて撮るものだから。効率は悪いけどそうやって手をかけた分、心が動くような素敵ものが創れるんだと思います。

写真や映像って、一般的には誰が撮影したかを気にすることがないかもしれないけど、そういう観点で作品を観ても面白いですよ。

「豪華キャストでお送りします!」という触れ込みよりはずっとね。

勉強になります。

写真集 「海街diary」 瀧本幹也

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『勝手に憧れ。#1 瀧本幹也さん – 海街diary –』

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