50ミリブログ

20121210_シェフの気まぐれ

先月あたり、週末などに知人の依頼や紹介で一般の方の写真を撮らせてもらうことが多かった。
秋は結婚式、七五三、運動会、就職活動、その他一般の人も参加するショーやコンテストなどイベントごとが多く、普段接しない「プロカメラマン」に触れる人も多い季節なんだと思う。

ボクは広告やプロモーションをベースに写真をやっているけど、記念や記録という写真もとても大切だと思ってる。
商業カメラマンとかファッションカメラマンとか写真作家とかフォトグラファーとか、そんなこだわりもボクはないみたい。
最近は「終活」が流行っているみたいだけど、一般的にもう少し人生のなかで、自分や家族を写真におさめるタイミングが多くてもいいんじゃないかなとも思う。

例えば髪を切ったとき、恋をしたとき、何かがうまくいったとき。悲しいときだっていい。
人の表情は毎日違うから、毎日撮ったっていい。そしてそれがその人の人生になる。

高校の頃、母を亡くした時、遺影に使う写真にすごく困った。ロクな写真が残っていなく、母が友達と温泉旅行にでも行ったときに”写るんです”で撮ったんだろうなという集合写真を無理矢理拡大するしかなかった。笑顔は笑顔なんだが、ボヤけてしまって母という人となりが分からない。今思うと、祖父がカメラ屋、ボクらは兄弟でカメラマンをやっているのにすごく無念なことである。
よく考えたら我が家は家族写真を撮ったことがないし、ボクも写真を始めてなかったらこんなこと考えもしなかったかもしれない。

どんな写真を残すかは難しいところだが、ボクはなるべくその人の素が出てる写真がいいかなと思う。
パッと見でどんな人か分かるような。家族写真だったら、どういう家族なのか。
いろいろ着飾っても、やはり表情や仕草にはその人らしさが出る。たいてい人はチャーミングだし、広告ではなく個人の場合は自分たちや家族が楽しむ写真になるはずなので、そんなところを写せたらいいのかなって。

広告はどんなイメージにするか、どこで撮るか、どんな画にするか、誰に出演してもらうか、表情や仕草はどうするか、光はどうするか、などなど、「何を言い、何を伝えるか」を基に撮るまでにいくつもの工程がある場合が多いが、それとは全く違う、その日のお互いのコンディションで決めればいいものである。
その時の最高のものが残せたらいい。

レストランで働いたことがないので正しい表現か分からないけど、「シェフの気まぐれ」ってのかな。
気まぐれといいつつ、旬であり、その日に一番自信のあるものだったりするアレ。

普段は構図やライティングがどうとか研究しているけど、子供と太陽はボクの言うことなど何も聞かないので、それに身を任せて「気まぐれ」で撮る。
そのコンディションしだいで大変苦労することもあるが、それは技術で補えばいいし、その技術もみんなが分からない程度に使えばいい。

料理だって写真だって自分でできるだろうけど、シェフに任せるのもいいもの。
なんてくだらないことを考えながらいろいろとアルバムを作っていたら、最近ミシンを買ってノリノリの嫁が大塚屋で仕入れた布でアルバム入れを作ってくれた。

もちろんこれも、「シェフの気まぐれ」だそうだ。

『シェフの気まぐれ。』

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