50ミリブログ

トラムとアプリとコンパクトシティ_フィンランドの話をいくつか

人口140万人ほどのフィンランドの首都、ヘルシンキ。
140万人というと、日本ではだいたい以下のような都市くらいの人口です。

 

・福岡市(約150万人)
・神戸市(約150万人)
・川崎市(約140万人)
・京都市(約140万人)
・さいたま市(約120万人)

 

ヘルシンキではほとんどの移動はトラムを利用しました。
ボクは何故だかトラムがある街が好き。ドイツにしても、イギリスにしても、オランダにしても、トラムの文化って何故か惹かれます。トラムに活気がある街は、コンパクトシティの成功の象徴のような気もします。

 

トラムとアプリとコンパクトシティ_フィンランドの話をいくつか

昔、1974年までは名古屋にも路面電車が走っていました。名古屋市科学館レトロでんしゃ館で当時の車両が見られます。
上の写真もヘルシンキのトラムですが、カラーリングが似ていますよね。

 

渋谷のハチ公前にあるものとも似ています。東京も、246に路面電車が走っていたなんて嘘のようですよね。

なんとも言えない風情というか、トラムという文化が心を打たれます。

 

ヘルシンキの公共交通は2019年4月からチケット代が変わったそうですが、これまたシンプルで非常に分かりやすい。しかもトラムは時間に正確で、安心して利用できます。

 

そしてすごく便利だったのが、スマホアプリ。
乗り換え案内付きのルート検索(駅で検索する乗り換え案内というよりは、現在地から行きたい場所まで調べられるからGoogleMapの経路検索のような機能)だけでなく、その場でオンライン(クレジット決済)でチケットが買えてしまい、その画面がチケットとなって乗車することができます。

 

だからホテルやアパートメントで目的地を検索して、その結果で乗車駅と乗換駅と降車駅が分かって、乗車する時間あたりにvalidity start(有効化)し、案内通りに乗るだけ。
SuicaのようなICカードを買う必要もないし、改札も何もないのでスッと乗れます。地下鉄のように登り降りも必要ないし、バスのように遅延も少ない。すごく快適でした。

 

車内も結構新しく、案内や広告もデジタルサイネージでした。風情がありながらも近代的で効率的です。

 

トラムとアプリとコンパクトシティ_フィンランドの話をいくつか_ヘルシンキ

↑ヘルシンキ市交通局HSLのアプリ画面。一番左がチケットで、スクショでの利用防止のためか、オレンジとブルーのイラストのような部分が常にクルクル動いています。
英語対応もしっかりしてあるので、観光客でも簡単に利用できます。

 

あと、1Dayチケット(1日乗車券)がvalidity startしてから24時間利用できるので、もし夜6時頃に買っても翌日の夜6時まで使用できるのがとても便利でした。確か8€なので3回くらい乗ればお得なんじゃないかな。

 

トラムとアプリとコンパクトシティ_フィンランドの話をいくつか_トゥルク

FOLIというのはフィンランドで6番目に大きい都市「トゥルク」の交通局のアプリ。
トゥルクはムーミンワールドがあるナーンタリから近い街で、人口は19万人弱。
日本の都市の人口だけでいうと近いのは、鈴鹿市、沼津市、岸和田市、小田原市、鳥取市、三鷹市、日野市、豊川市、弘前市、鎌倉市、苫小牧市、西尾市…など。

 

会社は違えどアプリの使い勝手はヘルシンキのHSLとほぼ一緒。チケットはヘルシンキのとは少し違い、QRコードが出てそれを乗車時にピッとします。一人で複数枚買えるので、代表の人が人数分買えばOKです。
トゥルクのバスの車内はWi-Fiも使えて便利でした。

 

ちなみにバスの運転手さんからチケットを買うこともできるのですが、ヘルシンキの場合それだと4€。アプリで購入すると2.8€なので、お得でもあります。

 

日本でこんなに差額のある仕組みにしたら反発多いのかな?
でもネットの世界だとアナログよりも手数料安かったり、Suicaなどは1円単位で発券機よりも若干安かったりもしてますよね。

働き方改革や人手不足という現実もあるので、仕組みを作り技術を利用してキャッシュレスを図っていくことも必要なんじゃないかと思います。マーケットもクレジット使えるお店がほとんどだし、今やフィンランドで現金使うことって、トイレやコインロッカーくらいじゃないかな?(逆にそこは現金なんかい!とも思うけど。)

ちなみにチケット発券機やキヨスクなどでチケット買ってもアプリと同額のようです。ただ、トラムの駅には発券機がほとんど設置していないので、アプリの利用がオススメですね。

 

トラムとアプリとコンパクトシティ_フィンランドの話をいくつか

ヘルシンキに続いて2番目に人口が多いタンペレという街では、トラム(ライトレール)を作ろうと工事中でした。
wikiによると1976年まではトロリーバスがあったそうですが、今はバスのみ。
タンペレではほぼ歩いて周っていたのですが、トラムが出来ていたら便利だっただろうなぁ。

 

愛知県でいうと豊橋市など、コンパクトシティ化を政策としている街が日本にもいくつかありますが、個人的には大賛成。
しかし、コンパクトシティ構想はうまく機能しないと財政を圧迫するだけの失策になってしまうこともあります。
トラム一つにしても、車を運転する側からするとどこを走って良いか難しいところがあるし、道路幅も減ってしまうので困ることもあるでしょう。

 

ただ、自動車社会になりすぎて活気がなくなってしまった地方の駅前商店街の再活性化や、飲酒運転・駐車場問題等の車のトラブルの低減、高齢化による交通の不便さが減らせるような設計が出来たら街はもしかしたら少し活気が出て、持続可能な社会の実現につながるんじゃないかな。

 

もちろんトラムの導入が全て良いのではなく、数年後にはドローンで人が移動できるようにもなるようだし、その未来を予測した街づくりをするのも価値を高める一つだとも思う。(車の完全自動運転の実現よりもドローンでの自動運転による移動の方が実現が早いかもしれないし)

 

愛知県民として、豊田章男社長が発表されたモビリティ・カンパニー宣言にも個人的には期待したいです。

 

どこかの見よう見まねや誰かの権力や趣味、個人的な有益さだけで街づくりをするのではなく、その都市ならではの特徴や未来構想をして、如何に住みやすい街&訪れやすい街にしていくかの都市デザインのビジョンを描くことが必要不可欠です。

 

ビジョンを描いて同意を得て、そして実行していくのは非常に難しいと思うけれど、人口減少が確実な日本において、実現していかなければ子供達の未来は明るくないかもしれません。

 

未来を描く仕事をしている端くれの人間として、どこかで関われたらいいなと生意気にも思っています。

『トラムとアプリとコンパクトシティ。- フィンランドの話を、幾つか。#03』

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